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弁護士コラム

民法(債務不履行の損害賠償請求)が改正されます!

以前からお話しているとおり、民法が改正される話が進んでいます。 民法改正について、1つ1つテーマを取り上げ、順番に、丁寧に分かりやすく解説していく予定です。 

今回のテーマは、「債務不履行の損害賠償請求」です。

 

債務不履行の損害賠償請求とは

債務不履行の損害賠償請求とは、債務者が、債務を果たさない(債務不履行)場合に、それによって発生した損害の賠償を求めることをいいます。

例えば、お金を貸した人が、返済日までにお金を返さない借主に対して、貸したお金と遅れた分の利息の支払いを求めるケースなどが、これにあたります。

そして、債務不履行のケースとして、一般的には、3つのケースが想定されています。

①履行不能:債務の履行が不可能になった場合

②不完全履行:債務が履行されたけれど不完全だった場合

③履行遅滞:債務の履行が可能だけれども遅れている場合

 

[具体例]

Aさんが、レンタルショップで、DVD2枚を、7泊8日で、レンタルしました。

Aさんが、うっかりDVDを紛失し、DVDを返却できなくなった場合が、①履行不能です。

Aさんが、うっかりDVD1枚を返し忘れ、1枚だけ返却した場合、②不完全履行です。

Aさんが、うっかり返却期限を過ぎて返却した場合が、③履行遅滞です。

 

 債務不履行の損害賠償請求の改正:判例法理の明文化

まずは、債務不履行の損害賠償請求に関する現行民法の規定を見てみましょう。

 

◆現行民法415条

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

 

この条文の一文目から、債務不履行の損害賠償請求の要件は、

1債務者がその債務の本旨に従った履行をしないことと、

2それによって損害が生じたことの2つであると読めます。

これに対して、条文の二文目から、上記のケースの①履行不能(「履行をすることができなくなったとき」)で損害賠償請求するには、上記1、2に加え、3債務者の帰責事由(責めに帰すべき事由)が必要であると読めます。

帰責事由とは、簡単に言えば、債務者の故意や過失、ミスです。

②不完全履行や③履行遅滞の場合に、債務者の帰責事由が必要であると、読むことは難しいです。

けれど、上記の具体例で、想定外の大震災が起きたために、返却期限に間に合わなかった、DVDが1枚割れてしまったなどの場合にまで、Aさんが損害賠償義務を負うのは酷といえます。

そこで、判例は、不完全履行や履行遅滞による債務不履行の損害賠償請求でも、債務者の帰責事由を要件としていました。

今回の民法改正により、履行不能・履行遅滞・不完全履行を含めた債務不履行全般の消極要件として、債務者の帰責事由が必要であることを明文化しました。

 

 債務不履行の損害賠償請求の改正:帰責事由の判断要素を明記

現行民法では、「帰責事由」が何かということについては何も規定がありません。

帰責事由とは何か、従来から議論がなされていたところ、民法改正案では、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」と判断要素が明記されることとなりました。

 

◆改正民法415条

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない

 

債務不履行の損害賠償請求の改正が与える影響

では、具体的に、債務不履行の損害賠償請求が改正されると、どのような影響が出るのでしょうか?

債務不履行の損害賠償に関する改正は、判例が解釈によって補っていた要件について、条文に明記する改正が行われました。

つまり、現行民法と判例や実務の不一致について、民法を改正して、判例や実務に合わせることになったので、実務的な影響は少ないとみられています。

また、帰責事由の判断要素を明記した点についても、従来の通説の考え方を一部否定する側面があるのですが、実際の裁判結果にはさほど影響はないだろうと言われています。

 


以上、今回は債務不履行の損害賠償請求に関する民法改正の説明をお送りしました。

次回、弁護士コラムもご期待下さい。

 

(文責:弁護士 若井) 

 

 

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