前回のコラムでお話ししたとおり、民法が改正される話が進んでいます。 民法改正について、1つ1つテーマを取り上げ、順番に、丁寧に分かりやすく解説していく予定です。
今回のテーマは、「法定利率」です。
法定利率とは
利率とは、利息の割合のことをいいます。
お金の貸し借り、ショッピングローン、自動車ローンや住宅ローンを利用する際に、「年○パーセントの利息」をつけるなどと使われています。この「年○パーセント」という部分が利率です。
お金の貸し借りなどの際に設定された「利率」は、「約定りりつ(やくじょうりりつ)」と言って、当事者の契約(約定)によって、設定された利率です。
難しい言い方をすると、消費貸借契約(借金)やローン契約に、付随して締結された「利息契約」ということになります。
当事者の契約による約定利率は、今回の民法改正の対象になっていません。
今回の民法で改正されることになったのは「法定利率」です。
法定利率とは、利息が発生する債権について、当事者が利率を定めていなかった場合に適用される、法律上定められた利率です。
この法定利率は、利息だけでなく、遅延損害金について、当事者が遅延損害利率を定めていなかった場合にも、適用されます(民法419条1項)。
例えば、個人間でお金を貸し借りする際、「借主は、貸主に対し、利息を支払う」とだけ約束して、何パーセントの利息を払うのか、利率を決めていなかった場合、法定利率が適用されます。
また、交通事故などで損害賠償請求権が発生した場合、交通事故の発生日から損害賠償金が支払われるまでの間、遅延損害金が発生します。交通事故は偶発的に起こるものですから、通常、当事者間で遅延損害利率について取り決めがあるということは考えられませんから、このような場合にも法定利率が適用されます。
法定利率の改正①まずは5%から3%に引き下げ
では、具体的に、今回の法定利率に関する改正の中身をみていきましょう。
現在の民法の法定利率は5%です。
・・・現在の民法が制定されたのは120年前です。今の時代、銀行などの金融機関にお金を預けても、なかなか5%の利息はつきませんね。
今回の民法改正では、現在の市場金利に合わせるために、まずは、法定利率を3%に引き下げることにしました。
法定利率の改正②利率を3年ごとに見直し
民法改正で法定利率が3%になる。
・・・それでも、今の市場金利からすると高金利だと感じる人も少なくないはずです。
そこで、民法改正から、3年ごとに、法定利率の見直しを行うことになりました。
これによって、3年ごとに、適用される法定利率が変わる可能性が出てきました(見直しされた法定利率は告示されます。市場金利との乖離がなければ、見直した結果、法定利率が変わらない場合もあります。)。
見直しは、過去5年分の銀行の短期貸付利率の平均を基準割合とし、その時の法定利率と基準割合を比較して、1%以上の開きがあれば、1%刻みで法定利率を上下に変動させることで行われます。
法定利率の改正③具体的な適用利率は基準時で固定
仮に、3年ごとに法定利率が変わったとしても、具体的な債権に対する利息や遅延損害金については、基準時で利率が固定されますので,途中で利率が変わることはありません。
基準時は、次のとおりです。
- 利息の法定利率の基準時は、その利息が生じた最初の時点(404条1項)。
- 遅延損害金の法定利率の基準時は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点(419条1項)。
例えば、先程の交通事故の例で、平成35年1月1日に交通事故が発生したとします。このとき、法定利率が3%だったとします。
損害額の確定や示談交渉、損害賠償請求訴訟に時間がかかり、損害賠償金100万円が支払われたのは、平成37年12月31日であるというケースを考えてみましょう。
その間、法定利率の見直しがあり、平成36年に2%に引き下げられたとします。
この場合の法定利率について、基準時である平成35年の年3%の利率が固定で適用され、平成37年の2%への引き下げの影響を受けません。
したがって、平成35年1月1日から平成37年12月31日まで、損害賠償金100万円に対して年3%の遅延損害金(100万円×3%×3年=9万円)が付されることになります。
以上、今回は法定利率に関する民法改正の説明をお送りしました。
次回、弁護士コラムもご期待下さい。
(文責:弁護士 若井)
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