弁護士法人中部法律事務所の法律相談からご依頼までの手続きや弁護士費用等に関するよくあるご質問です。
自己破産とは、借金(債務)返済が不可能になった場合に裁判所に破産手続開始を申立て、破産管財人が債務者の財産を全て処分してお金に換え(換価手続)、集まったお金を全ての債権者に配当し(配当手続)、財産と負債を清算する制度のことです。 債務者の財産が一定基準未満で破産手続の費用にすらならない場合には、破産手続きは開始の決定と同時に廃止され、終了します。この場合は、破産管財人による換価手続や配当手続は行われません(同時廃止事件)。 そして、破産手続終了(廃止)後、裁判所から免責許可決定を受けることで、借金(債務)の支払義務が免除となります。
(より詳しく)
一般的には、自己破産すると借金が無くなると理解されているようです。大きく間違っていませんが、少し厳密かつ専門的に説明すると、次のようになります。
自己破産とは、破産法で定められた破産手続きを、債務者自ら(代理人の弁護士が申し立てる場合を含みます)裁判所に申し立てることをいいます。
なお、破産法では、債権者が破産手続きを申し立てることも認められており、債務者自ら行う自己破産に対して、「債権者申立て」と呼ばれています。
破産手続きとは、経済的に破たんし、借金など債務全てを返済できない状態に陥った債務者について、その債務者の財産を処分してお金に換え(換価手続きといいます)、そのお金を債権者に公平に配当(配当手続といいます)する裁判手続きをいいます。
そして、自己破産する際は、この破産手続きと併せて免責許可申し立てを行い、破産手続きによっても支払いきれなかった借金などの債務を免責してもらいます。
つまり、自己破産とは、債務者自ら破産と免責の2つの手続きを通じて、借金などの支払い義務を免責してもらうことをいいます。
主なメリットは、次の二つが考えられます。
1.原則として借金が免除されます。借金がゼロの状態から再スタートを切ることができます。
2.現金99万円までは自由財産として手元に残せますし、保険や自動車等の財産が残せる場合もあります。
主なデメリットは、以下のとおりです。
1.官報に破産者の氏名住所が掲載されてしまいます。戸籍や住民票には記載されません。
2.価値の高い自動車や住宅を保持することはできません。住宅を残す場合は個人再生手続き等をご検討下さい。
3.免責許可決定を得るまでは、一定の職業(生命保険募集員等)に就けません。
4.浪費・ギャンブル等の免責不許可事由があると、免責が認められません。
(詳しい解説)
●自己破産のメリット
自己破産の最大のメリットは、一部の例外を除き、借金が全て無くなるという点にあります。借金をゼロにできるという点で、最も有効な債務整理の方法といえます。加えて、借金をゼロにするにあたり、裁判所の免責許可を得れば、貸主など債権者の同意は不要です。
債務者の生活に最低限必要な財産を残すことができる点もメリットとして挙げられます。
破産手続きは、債務者の財産を処分してお金に換えて、そのお金を債権者んい公平に配当する手続きなのですが、債務者の財産の内、債務者の生活に最低限必要な財産は、換価する必要がなく、手元に残すことができます。このような財産は自由財産と呼ばれます。
なお、何が自由財産かは、裁判所が運用基準として定めています。基本的には、99万円を超える資産を保有することはできませんが、以前から使用していた家具家電や衣類など、実生活に影響のある所持品は、99万円以内に収まるため、ほとんど手放す必要がありません。
その他、自己破産を弁護士に依頼することで貸金業者からの取立て、貸金業者への返済がストップすることや、裁判所に自己破産を申し立てると貸金業者など債権者から給料や預金を差押えられなくなることも、メリットとして挙げられます。
●自己破産のデメリット
自己破産により、借金をゼロにするという強大なメリットを受けるにあたり、破産法の手続き上、債務者にはいくつかの制約が課されます。
・官報という国の発行する機関紙に自己破産した事実が掲載されます
・破産手続き中は、警備員や保険募集員、弁護士や税理士などの士業や後見人等、一定の資格を有する職業に就くことが制限されます。
・破産手続き中は、住居の移転に許可が必要です。
・破産手続き中、郵便物を破産管財人が調査します(管財事件のみ。)
・99万円を超える財産については、手放す必要があります。
その他、社会生活上の制約として、
・信用情報機関(ブラックリストと俗称されています。)に登録され、5年~10年程、借金やローン、クレジットカードの利用が制限されることなども、デメリットとして挙げられます。
債務者の財産が一定基準未満で破産手続費用にすらならない場合、破産手続きは開始決定と同時に廃止されて、終了となります。この場合、破産管財人による換価・配当手続はありません。これを同時廃止事件といいます。 他方、債務者に一定基準以上の財産がある場合、裁判所によって破産管財人が選任され、破産管財人が債務者の財産を換価して、債権者に配当します。これを管財事件といいます。 もっとも、財産の隠匿・流出の疑いや免責不許可事由の疑いがある場合には、財産が一定基準未満でも管財事件となることがあります。
(詳しい解説)
自己破産の手続きには、大きく分けて同時廃止事件と管財事件の2つの手続きがあります。
同時廃止事件とは,破産手続きの開始と同時に,破産手続きが廃止(終了するという意味です)される破産事件をいいます。
自己破産とは、破産手続きと免責手続きという2つの手続きを通じて、借金などの支払い義務を裁判所に免責してもらうことをいいます。
2つの手続きの内,本来,破産手続きでは,破産者の財産を処分してお金に換え(換価手続きといいます)、そのお金を債権者に公平に配当(配当手続といいます)します。
しかし,事案によっては,そもそも破産者が処分の対象となるような財産を保有していない場合があります。その場合は,換価手続きも,その後の配当手続きも行うことができません。
そのような場合の例外的手続きとして,破産手続きを開始するのと同時に,破産手続きが廃止(終了)する,同時廃止と呼ばれる手続きが認められています。
管財事件と同時廃止事件のいずれの手続きを取るかは,裁判所の定める基準を超える財産を持っているか,破産者を免責させることについて明らかな問題がないかなどを踏まえて,裁判所が決めます。
同時廃止事件では,管財事件と比べて,破産管財人が選任されないため自己破産にかかる裁判費用も安くなり,破産手続きが開始と同時に廃止(終了)するため,期間も短くすみます。
99万円までの現金、年金受給権、生活保護受給権などの生活に必要な一定の財産は、処分せずに手元に残しておくことが認められています(破産法34条)。これを自由財産といいますが、法定の自由財産以外にも、申立によって処分の対象外にすることが認められています(自由財産の拡張)。 破産開始決定後に取得した財産や収入は、全て取得することが可能です。
(詳しい解説)
破産手続きでは、原則として生活に最低限必要な財産(99万円を超える財産)は、処分されることになります。
破産手続きとは、経済的に破たんし、借金など債務全てを返済できない状態に陥った債務者について、その債務者の財産を処分してお金に換え(換価手続きといいます)、そのお金を債権者に公平に配当(配当手続といいます)する裁判手続きをいいます。
このように、破産手続きでは、債務者の財産は処分することが原則となっています。ですが、個人が全ての財産を処分してしまうと生活が維持できず、再建を図ることができません。
そこで、破産法は、自由財産として、債務者の生活に最低限必要な財産の保有を認めています。逆にいうと、債務者の生活に最低限必要な財産以外は、処分する必要があるということです。
どのような財産が自由財産(債務者の生活に最低限必要な財産)に含まれるかは、法律や裁判所の決定で定められます。
例えば、年金受給権や生活保護受給権などの差押禁止財産は、自由財産に含まれます。
破産手続きの開始決定以降に取得した財産も,自由財産に含まれます。
さらに、現金では99万円(一般的な家庭に必要な生活費3カ月分(1月33万円×3)までが自由財産として認められます。
加えて,現金以外でも,裁判所の決定によって自由財産と認められるものがあります(自由財産の拡張と呼ばれています)。
どのような財産について,どの程度自由財産の拡張が認められるかは,裁判所が運用基準を定めています。
同時廃止事件の場合には、財産の換価等は行われないので、自動車や預貯金を手放す必要はありません。 管財事件の場合でも、自由財産の拡張によって自動車や預貯金を保持できる場合があるので、弁護士にご相談ください。
(詳しい解説:自動車について)
自動車ローンなどが残っている場合は車を処分することになりますが,そうでなければ,自動車を処分しないで,使用継続する方法はあります。
・自動車ローンが残っている場合
自動車ローンの支払いを終えるまでは、自動車販売会社又はローン会社に自動車の所有権が留保されているのが通常です。このような場合に自己破産すると、ローン会社などに留保されている所有権に基づいて、自動車を引き揚げられてしまいます。
・自動車ローンがない場合
基本的には,自動車は財産なので,換価処分の対象となります。
ですが,車種や年式,走行距離などによって財産価値がない場合,処分の対象にはなりません。
また,仮に財産価値がある場合でも,高価なものでなければ,裁判所に自由財産(破産者の生活に必要な最低限の財産)として認めてもらうことで(自由財産の拡張といいます),自動車を保持できます。自由財産を拡張により,その自動車が自由財産と認められるかは,自動車の価値や,自動車以外の財産の保有状況等により変わります。
借金(債務)を免除するという裁判所の決定のことです。これは破産開始決定の後になされるものです。 すなわち、破産開始決定を受けた時点では、まだ借金(債務)は免除されていないのです。なお、自己破産の申立をした場合には、同時に免責許可の申立もしているとみなされます(破産法248条4項)。
(少し詳しく)
個人の行う自己破産とは、債務者自ら、破産と免責の2つの手続きを通して、借金など債務の支払い義務の免除をしてもらう手続きをいいます。
免責許可とは、上記の免責手続きにおいて債務の支払いを免除するという裁判所の決定をいいます。この決定を得て、さらに、この決定が確定して、確定的に借金などの債務が免除されたことになります。
自己破産の申立では、破産手続き開始申立と同時に免責許可手続き開始の申立もしているものとみなされます。
なお、免責手続きは、個人の自己破産特有の手続きであり、法人の破産手続きではこのような手続きはありません。(法人の破産手続きでは、破産手続きの終了とともに法人が消滅するため、あえて債務を免除する免責手続きを取る必要がないのです。)
免責不許可事由があると、免責を受けられない可能性があります。特に注意すべき免責不許可事由に「浪費・賭博」があります(破産法252条1項4号)。 収入に見合わない大きな買い物をして借金を作った方や、パチンコ、パチスロ、競馬、競輪その他のギャンブルで借金を作った方は、これに該当することがあります。
(詳しい解説)
一定の事由が有る場合,債務の免責が認められない場合があります。
自己破産すると,基本的には債務は免責されることになります。ですが,一定の事由がある場合,免責が許可されません。これは,免責不許可事由と呼ばれています。
破産法では,252条1項で,免責不許可事由を定めています。
免責不許可事由には,
・債権者に配当すべき財産を,隠す,壊す,不利な処分をする,価値を不当に減少させるなどしたこと
・破産を遅らせるために,不利な条件で借金したり(ヤミ金など),不当な換金行為をしたこと
・特定の債権者を優遇するために,義務のない返済などをしたこと
・浪費,ギャンブル(パチンコや競馬など),FX・先物取引などの投機性の高い取引で財産を減少させ,借金を作ったこと
・借金の返済が不能であると知りながら,それについて相手を騙してお金を借りたこと
・帳簿や確定申告書などを隠滅,偽造,変造したこと
・裁判所に,虚偽の債権者一覧表を提出したり,必要な説明・書類の提出を拒否したり,虚偽の説明をしたり,調査に協力しなかったこと
・不正な手段で破産管財人などの職務を妨害したこと
・過去7年以内に免責を受けたことがある
などがあります。
なお,免責不許可事由があっても,裁判所が色々な事情を考慮して,免責を許可することがあります。これは,裁量免責と呼ばれています。
浪費やギャンブルがあっても,少額である,それらをすでにやめている,十分に反省しているなど,諸々の事情を考慮して,裁量免責されることもたくさんあります。
裁量免責といって、免責不許可事由がある場合でも、裁判所が破産に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責が相当と認められるときは、裁量により免責許可の決定ができることになっています(破産法252条2項)。したがって、免責不許可事由があると思われる場合でも、諦めずに弁護士に相談されることをお勧めします。
(少し詳しく)
パチンコや競馬は免責不許可事由にあたり、原則として債務が免責されませんが、それらが自己破産に与えた影響度合いなどを考慮して、裁判所が免責を認めることがあります。
免責不許可事由があると思われる場合でも、免責が認められるケースも多くありますので、弁護士に相談することをお勧めします。
自己破産とは、債務者自ら破産と免責の2つの手続きを通じて、借金などの支払い義務を免責してもらうことをいいます。
免責手続きにおいて、免責不許可事由と呼ばれる一定の事由が有る場合,原則として債務の免責が認められません。
そして、パチンコや競馬、浪費などは、免責不許可事由とされており、これらがあると原則そして債務が免責されないことになります。
しかし、パチンコや競馬、浪費があったとしても、それに費やした金額や期間、そして、それらが借金及び破産に与えた影響は一様ではありません。
例えば、適正な金額のお小遣いを受け取り、その範囲内でパチンコや競馬をしていたとしても、それらのために借金が増えたとはいえません。
そこで、破産法は、裁判所による裁量免責を認めています。
裁量免責とは、免責不許可事由がある場合でも、破産するに至った経緯その他一切の事情を考慮して、裁判所が、裁量によって、免責を許可することをいいます。
事案にもよりますが、実務上、免責不許可事由がある場合でも、裁量免責によって債務が免責されることがほとんどです。
通常の借金は免責されますが、税金、悪意による不法行為の損害賠償、養育費、婚姻費用、わざと裁判所に届出をしなかった債権者の債権など、一定の債権は非免責債権といって、免責されません(破産法253条1項)。これらは支払い続ける必要があります。
(詳しい解説)
自己破産は,借金などの債務を免責してもらうための手続きですが,破産法は,免責されない債権(ここでは,立場を替えて,債務は「債権」と呼ばれます)を定めています。このような債権は,非免責債権と呼ばれています。
破産法では,253条1項で非免責債権を定めています。
非免責債権には,
・税金などの公租公課
・悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
・故意または重過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
・夫婦や扶養家族の生活費、子の養育費などの請求権
・従業員の給料など
・破産手続きにおいて、わざと債権者一覧表に記載しなかった債権者に対する債権
・罰金
など、があります。
破産及び免責手続きにより、破産者の借金などの債務は免責されたとしても、非免責債権は、免責されません。
滞納している税金などの非免責債権は、自己破産しても支払わなければなりません。